ちいさな幸福
卒業式が終わって、実家に帰る高速バスのなかで、
角田光代の「ちいさな幸福 All Small Things」を読んだ。
「恋人と過ごした、どんな時間が一番心に残ってる?」
登場人物に、読者に、問いかけながら物語が進んでいく。
思い出の記憶は不思議。
どうでもいいようなささいなことがすごく記憶に残っていたりする。
一番心に残っているデートも意外にそうだったりして…。
そんなテーマから生まれた短編集のよう。
思い出や出逢いと別れというテーマが気分に合って、読みながらこの2年間のことやずっと前のこと、これからのことをぐるぐる考えていた。
これから引っ越すことも、いつものように研究室に行かなくなることも、夢のように思えた。
卒業式の日、仙台は午後からなぜか季節外れの雪が降って、仲良しの留学生の友達が「なごり雪だね」って言ってくれた。
窓の外を見たらまだ真っ白の雪で、ふっと涙が溢れて止まらなくなった。
そして、泣きたかった自分に気付いた。
悲しいだけじゃない、
さみしいだけじゃない、
家族や友達や恋人や、この2年間に出逢えた人へありがとうの気持ちとか、だからこそもっと頑張れたんじゃないかっていう悔しさとか、いろいろまじってよくわからなくなってた。
でも、泣いているうちにこれからの不安も希望も全部、温かい涙に溶けていった。
この2年間、本当に充実した日々だった。
自分は運が良すぎるって、こんなにいい人ばかりと出逢って、これから嫌な上司にあたったらきついなぁなんて無駄に考えたりしながら思う。
いろいろあった、でも、
とにかく帰れる場所がまたひとつ増えたことが、たまらなく嬉しい。
今度帰るときは絶対に笑って帰りたい。



